各種診療

内科

慢性腎臓病

どんな病気?

数ヶ月から数年にかけて進行性に腎機能が低下する疾患です。腎臓は一度障害を受けると元には戻らず、加齢に伴って腎機能は低下するため、高齢になる程慢性腎臓病のリスクが高まります。先天性腎疾患、慢性腎炎、感染症、結石、腫瘍や腎臓以外の泌尿器科の病気(尿管結石、膀胱腫瘍等)等が原因となります。

どんな症状?

初期は無症状ですが、多飲多尿、脱水が認められるようになり、体重減少、元気食欲低下が顕著になります。
次第に嘔吐、下痢、痙攣等の尿毒症の症状が現れ、貧血や目が見えなくなる事もあります。

治療法は?

定期的な皮下点滴、内服薬及び腎臓病用療法食を継続し、定期的に血液検査を行います。重度な場合は入院が必要になる事もあります。

予防は?

失われた腎機能の回復は出来ませんが、早期発見し適切な治療を行えば生存期間を伸ばすことができます。無症状でも7歳以上になったら定期検診を積極的に受けましょう。

猫伝染性腹膜炎

どんな病気?

猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスに対する免疫の過剰反応によって起こる病気です。ご自宅にお迎えしたばかりの若い猫ちゃんや、たくさんの猫ちゃんを飼育している環境、あるいは感染・外傷などの大きなストレスにさらされた後などに見受けられることが多く、また、高齢猫ちゃんでの発症もまれに認められます。

どんな症状?

ご自宅では元気食欲がない、熱っぽいなどの症状が認められ、院内の検査では胸・腹水の貯留、眼や腎臓の障害、重度の炎症などが明らかになることがあります。

治療法は?

有効な治療方法はこれまでありませんでした。しかし、現在では高額ではありますが抗ウイルス薬による治療で高い効果が認められています。

予防は?

特定の予防方法はありませんが、大きなストレスを避けた生活を送ることが大切です。それぞれの猫ちゃんに対して十分なテリトリー・トイレを設けましょう。一般に広く存在する弱毒猫コロナウイルス(※)が猫の体内でFIPウイルスに変異し、発症すると考えられています。従来からは感染猫からの直接の感染・発症はしないと考えられていますが、同一環境での複数頭発症も見受けられるため、感染猫ちゃんがいるお宅では念のために感染に注意して対策するに越したことはありません。

※ヒトのコロナウイルスとは別のものです。

外科

肛門周りのしこりや腫れ
(肛門周囲腺腫/腺癌、肛門嚢アポクリン腺癌、肛門嚢炎/破裂、会陰ヘルニアなど)

どんな病気?

肛門周りや肛門から奥に入った位置にしこりができたり、肛門の脇が膨らんだり、腫れて出血することがあります。症状は病気によって異なりますが、お尻周りに異常を発見したら動物病院を受診して何が起こっているのかを調べる必要があります。

どんな症状?

ご自宅で肛門周りを見た時に、イボのようなものやぼんやりとした膨らみを発見することがあります。病気によっては痛みや出血を伴ったり、全身症状を示すこともあります。また逆に、痛みなどの症状は示さず、トリミングサロンや動物病院で初めて発見されることも多くあります。

治療法は?

まずは何が起こっているのかを、身体/直腸検査や細針細胞診などで把握します。タイトルにあげた病気以外の病気のこともあるので、慎重に判断します。病気によっては、全身の検査(血液/超音波/レントゲン検査など)が必要です。その後、その場での処置や内服薬の処方、あるいは全身麻酔下での手術など必要なの治療についてご説明します。

予防は?

早期発見が大切です。ご自宅で異常を発見したら速やかに動物病院を受診しましょう。すぐに受診できない時にはまずは電話で相談することも大切です。また、去勢手術をしておくことで発生を減らせる病気もあります。

消化器科/内視鏡科

誤飲・誤食

どんな事故?

消化できないものや中毒を起こすものを間違えて食べてしまうことで起こります。

どんな症状?

誤食したものによってさまざまですが、食べた直後には無症状で、時間がたってから症状(嘔吐、消化管閉塞、中毒)を起こすことが多いです。

治療法は?

症状に繋がる可能性のあるものは、可能ならば吐いてしまうのが一番安全です。吐き気を催すお薬を投与することで催吐を行います。それでも目的のものが出てこない場合には、状況によって一旦様子を見る、あるいは全身麻酔下で の内視鏡処置や開腹術に進むなどの判断を行います。

予防は?

おいしい食べ物の匂いのついたビニール袋や使い終わったマスクなどは、わんちゃんねこちゃんの届かないところに 処分しましょう。観葉植物やいただきものの花束などにも注意が必要です。脱いだ後の靴下、プレゼントのリボンからほつれてきた細長い繊維、床に敷いたウレタンマットの端、テーブルの上に置きっぱなしの小袋入りのチョコなど、おうちの子が何に興味を引かれそうか、日頃から注意して観察しましょう。

泌尿器科

猫の尿道閉塞

どんな病気?

炎症産物や結石か尿道に詰まることて、尿か出にくくなったり出なくなってしまう状態を尿道閉塞といいます。雄猫は雌猫より尿道が細いためより詰まりやすいと言われています。全く尿が出ないと急性腎不全となり、1~2日で死に至ることもあります。

どんな症状?

排尿にかかる時間が長い、頻繁にトイレに行く、少量しか尿が出ない、排尿時に痛みで鳴く、尿が赤い、元気食欲がない、嘔吐や下痢をする、など。

治療法は?

尿道にカテーテルを入れ詰まりを取り、貯まった尿を取り除きます。急性腎不全を併発している場合は、入院下で点滴を行い腎臓を保護します。閉塞が解除できない場合や再発を繰り返す場合には尿道を短くする手術を行うこともあります。

予防は?

尿の回数や色に異常がないかよく観察し、初期症状の段階に気がついて速やかに病院に連れて行くことが重要です。特に、水量が減る秋冬は尿道閉塞の発生が多くなりますので注意しましょう。飲水量を増やすために、フードに水を加えたり、ウエットフードをとりいれたり、水飲み場を増やすなどの工夫をしてみましょう。また、トイレを我慢させないように、トイレを 猫ちゃんの頭数+1個 設置し、常に清潔に保つことも重要です。

循環器科

僧帽弁閉鎖不全症

どんな病気?

心臓内の弁が十分に閉まらなくなり、血液の逆流が起こります。全身に血液を送る心臓の機能が低下するため疲れやすくなったり、また逆流によって咳や肺水腫を起こすことがあります。

どんな症状?

徐々に進行している場合には、寝ている時間が多くなる、散歩に行ってもすぐに帰りたがる、咳がでるなどの症状が認められることがあります。また、急な悪化を起こした場合には、元気食欲がない、横になって眠れない、呼吸が荒いなどの症状が起こり、速やかな受診が推奨されます。重度の場合には、ご自宅で一緒に生活していても心臓の雑音に気づく場合もあります。

治療法は?

急激な肺水腫の場合には、酸素室での管理、利尿、血管拡張、強心などの集中治療を行います。安定状態の場合には、強心剤を始めとする内服薬での管理を行います。

予防は?

ご自宅での症状が認められる場合には一度当院までご相談ください。また、診察時に心雑音が聴取された場合には、心臓の検査をおすすめしております。急で重度の症状を予防するために、定期的に検査を行い、必要に応じた投薬内容への随時変更を行っております。ご自宅では、安静時の呼吸数の測定をおすすめしております。呼吸数を図るコツについては、当院スタッフまでお声掛けください。

皮膚科/耳科

皮膚のかゆみ

どんな病気?

さまざまな原因によって体の痒みを生じます。わんちゃんねこちゃんともにアレルギーの要因が関係することが多くみられます。寄生虫や元々の体質の問題、季節などの環境要因が大きい場合もあります。皮膚バリアか゛損なわれることによって、二次的な感染を生し゛て悪化することか゛あります。

どんな症状?

体をかゆがって、舐めたり描きこわしたりします。

治療法は?

二次的な感染によって悪化している場合には、必要に応じた検査を行い、まずは感染や炎症をおさめます。アレルギーの要因がある場合には、長期的に痒みのコントロールを行う場合も多くあります。治療は内服薬の投与が主となりますが、そのほかには、注射薬、外用薬、シャンプー、サプリメントの投与、あるいは食事の変更なと゛を必要に応じて行います。

予防は?

アレルギ―性の皮膚炎であれば、長期にわたって症状をコントロールする必要があります。初めて受診する場合には、まずはアレルギー以外の原因による痒みの可能性をしっかり評価して解消しましょう。飼い主さまによる症状の観察が非常に重要となりますのて゛、獣医療スタッフと十分な連携をとって悪化を防ぎましょう。

ねずみとり粘着シートによるトラブル

どんな病気?

ねずみ取り用の粘着シートが、ねこちゃんにくっついてしまうことがあります。

どんな症状?

体のあちこちにベタベタした粘着液がくっついて、ねこちゃんも家の中も大変なことになります。

治療法は?

ハサミなどで粘着液と毛を切り取ろうとすると怪我をさせてしまうことがあります。大量にくっついた場合には、動物病院で取るのが一番です。おとなしいねこちゃんであれば、毛を刈らずにきれいに洗浄・除去することができます。洗浄・除去が難しい場合には、毛を刈ることもあります。

予防は?

ねずみ取り用品は、粘着シートだけでなく、殺鼠剤にも注意が必要です。設置する場合には、なるべくねこちゃんが触れられないような場所を選びましょう。ただし、ネズミの気配に気をひかれたねこちゃんは、普段なら到底入れないようなスペースにも入ってしまいます。トラブルが発生したらできるだけ速やかに動物病院を受診しましょう。

外耳炎

どんな病気?

耳のひだから鼓膜までの耳道で、炎症や感染が起こります。

どんな症状?

耳を触ったり、足で掻く、床に擦り付けるなどの症状が見られることがあります。また、普段よりも耳が匂ったり、ご家族が耳を触ろうとすると嫌がることもあります。

治療法は?

耳道を洗浄処置したり、点耳薬や内服薬で炎症・感染を治めます。一回の処置で改善するような軽度のものから、頻回の処置や投薬が必要な中~重度のものまで様々です。外耳炎の治療と並行して、外耳炎を起こしやすい素因(アレルギー・ホルモン疾患など)に対しても必要に応じて診療を行います。重度のものでは中・内耳炎の可能性もあるため、慎重に治療する必要があります。

予防は?

症状がある場合には、お気軽にご相談ください。また、ワクチン接種など耳の診察以外で受診された際にも健康チェックの一環としてお耳を拝見することがあります。健康な耳に対するご自宅での耳そうじは基本的には不要です。もしそうじしたくなるような様子の耳であれば、一度獣医師までご相談ください。耳道に生えている毛については、抜く場合もあれば抜かない場合もあります。お耳の様子を 拝見して、ご家族とご相談の上で判断します。外耳炎は重症化しないよううまくコントロールすることが大切です。軽症のうちに治療管理しましょう。

歯科

歯周病

どんな病気?

歯の表面に付着した歯垢中の細菌が原因となり、歯を支持する歯周組織が炎症をおこす病気です。2歳以上のわんちゃん・ねこちゃんの8割は罹患しており、特に中高齢で多く認められます。

どんな症状?

口臭、歯垢の付着、歯肉の腫れや出血、硬いものが食べられない、歯がグラグラする、くしゃみ、鼻水、鼻出血などが認められます。重度になると頬に穴が空いてしまったり、顎の骨が溶けてしまったり、さらに進行すると心臓病や肺炎、腎臓病の原因となる事もあります。

治療法は?

全身麻酔下で歯垢・歯石(歯垢が硬くなったもの)を除去します。歯がグラグラする場合は抜歯します。

予防は?

歯磨きが最も効果的です。小さい頃から口を触る事に慣れさせ、1日1回歯磨きできれば理想的です。歯磨きが出来ない、方法が分からない等、お困りのことがあればお気軽にご相談ください。

脳神経科

特発性前庭障害

どんな病気?

水平バランスを保つ器官に障害が起こることで起こります。

どんな症状?

高齢のわんちゃんで急に嘔吐して、立てなくなる、目が回るなどの症状がでることが多いです。

治療法は?

1~2週間で自然に症状が治まるまでの間、体を支える治療を行います(お食事の介助、脱水の予防など)。また、内中耳炎や中枢神経障害との判別を行うことも大切です。症状はある程度残ることも完全に消失することもありますが、生活に大きな支障を生じないことが大半です。

予防は?

特定の予防方法はありませんが、日頃から十分な水分をとるなどのケアが望ましいです。また、急にけいれんや発作に似た症状を起こすためご家族が慌ててしまいがちですので、事前にどのような症状なのか知っておくこともとても大切です。